未婚で出産することを決意したシングルマザー。
夫と離婚、または死別したシングルマザー。
同じ子どもを抱えるひとり親家庭でも、未婚か離婚かによって、受けられる公的支援制度が違うことをご存じでしょうか?
実は未婚のシングルマザーの場合、利用できない行政支援制度があるのです。
この記事では、その大きな違いのひとつである「寡婦控除制度」を中心に紹介していきます。
» 未婚ひとり親家庭のみなし寡婦控除【税軽減】メリット・デメリットは?
増加する未婚のシングルマザー
シングルマザーというと「配偶者と離婚、または死別後に子どもをひとりで育てている女性」をイメージされることが多いのではないでしょうか。
しかし、一口にシングルマザーといっても、母子家庭になるに至るまでの過程や事情は実にさまざまです。
政府統計の「国税調査(1995年~2015年)」によると、未婚で母子家庭となる世帯数は、20年間で4.8万世帯→17.7万世帯と約4培に増加しています。
母子世帯数のなかで未婚の母が占める割合も、6.5%→16.6%へ増幅するなど、未婚のままシングルマザーとなるケースは今や決して珍しくないのです。
しかしその一方で、
- 未婚でシングルマザーになった人
- 離婚や死別によってシングルマザーになった人
この両者の間では、優遇される税法上の制度が異なることが問題となっています。

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未婚のシングルマザーは受けられない寡婦控除
一度でも婚姻したことがあるような離婚・死別を経てシングルマザーとなった人とは違い、未婚のまま出産したシングルマザーには受けられない制度があります。
それが「寡婦控除」です。
寡婦控除とは?
「寡婦」とは、結婚していたが夫に先立たれてしまった女性、または夫と離婚したあと未婚でいる女性のことを指します。(同じような立場の男性を寡夫と呼びます)
寡婦控除は、寡婦の所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。
寡婦控除を受けると、課税対象となる所得税や住民税の金額を抑えることができるので、結果として税金が安くなるというメリットがあります。
寡婦控除の金額はいくら?
寡婦控除によって差し引かれる金額は「一般の寡婦」と「特定の寡婦」の条件によって異なります。
一般の寡婦 | 控除額 : 27万円 |
---|---|
特定の寡婦 | 控除額 : 35万円 |
一般の寡婦
その年の12月31日の時点で次のいずれかに当てはまる人が「一般の寡婦」とされています。
- 扶養親族または同一生計の子どもをもつシングルマザー(子どもの所得金額38万以下)
- 夫と死別・夫の生死不明のシングルマザーで合計所得金額500万円以下
特定の寡婦
一般の寡婦のうち、次の全ての要件を満たす人が「特定の寡婦」とされています。
- 夫と死別または離婚後に未婚・夫の生死不明
- 扶養親族である子どもがいる
- 合計所得金額が500万円以下
上記に当てはまる場合、年末調整時に自ら申告することで寡婦控除を受けることができます。
寡婦控除を受けられないデメリット
未婚のシングルマザーは、寡婦控除が適用されるシングルマザーと比べて所得が高く算定されてしまいます。
つまり、納税しなければならない金額が高くなってしまうということですね。
また、
- 保育料
- 公営住宅の家賃
- 国民健康保険料
これらの”所得を基準”に算定される費用についても、離婚のシングルマザーと比べて利用負担が大きくなります。
同じシングルマザーでありながら、未婚と離婚といった立場の違いだけで、生活負担が大きくなるのは未婚のシングルマザーにとってはつらいところですよね。
子どもを育てるという大きな責任を負っていれば、それはなおさらでしょう。
こうしたひとり親家庭間の格差を解消するために生まれたのが「寡婦控除のみなし適用」です。

未婚のシングルマザーは寡婦控除のみなし適用を
寡婦控除のみなし適用とは、未婚のシングルマザーに対しても所得から寡婦控除額を差し引いたとみなした上で、福祉事業の負担額を算定する制度です。
所得税や住民税といった納税額の負担を減らすことはできませんが、離婚のシングルマザーと同じように受けられる「子育て支援制度」の幅は広がることになります。
寡婦控除のみなし適用対象事業の一例
- 保育事業
- 特別障がい者手当
- ひとり親家庭等医療費支給制度
- 放課後児童健全育成事業
ひとり親世帯間の公平性を確保するために設けられた寡婦控除のみなし適用は、2018年度から全国の自治体へ拡大されています。
その対象となる福祉事業の内容は、自治体によって実にさまざまです。
なかには、ひとり親家庭等日常生活支援事業や放課後広場事業など、母子家庭にとってメリットのある事業に力を入れている自治体もあります。
寡婦控除のみなし適用の申請方法
寡婦控除のみなし適用の申請は、各自治体の担当窓口に必要書類を提出することで可能となります。
申請方法とあわせて、お住いの自治体の対象事業を確認してみてくださいね。

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まとめ
シングルマザーになる経緯やその事情はまさに人それぞれ。
その負担も「未婚か離婚か」という理由だけで、一律に図れるものではありませんよね。
寡婦控除制度が成立した昭和26年と比べ、現在はひとり親家庭の形態も大きく変化しています。
未婚のシングルマザーと離婚・死別のシングルマザーの間で利用できる行政支援の違いがあることは確かですが、近年はその格差を埋めるために寡婦控除みなし適用が全国へ広がっています。
未婚のシングルマザーで寡婦控除みなし適用を申請していない方は、これを機にぜひ自治体に問い合わせてみてくださいね。
